「Geography」は、1992年の冬に東京湾岸の埋め立て地の地面を8×10の大型カメラで撮影したシリーズです。
「この写真を見ていると作者でも距離感がよくわからなくなる。都市の下にある地面がそのまま、都市を上から見た衛星写真のようなイメージに変わる。埋立地の地面がどこかの惑星の表面のようにも見えてくる。遠近法を否定した、ただの平面が様々な距離やイメージの揺らぎを生み出している。
その後、主に東京をテーマに都市風景を撮影し続けているが、一見何の関係もないこの作品は、都市の底にある地形に対する関心、密度や細部に対するこだわりなど、現在の自分の作品にどこか繋がっているように感じている。」
佐藤信太郎
(収録テキストより抜粋)
「佐藤はなぜこのような写真を撮り始めたのだろうか。それはその時点で、都市風景、とりわけ東京の風景こそが、その後の彼の最も重要な写真撮影の営みになっていくという予感があったからだろう。佐藤はこの「Geography」のシリーズで、写真家としてのスタートラインを引き直しているように見える。結果として、彼は常に変容し、捉えがたく、定まった形を持たない東京のあらゆる要素がそこから伸び広がっていく、「風景の零度」とでもいうべき眺めを手に入れることができた。カメラを手に東京を巡り歩く彼の長い旅は、まさにその出発点となる、足元の「地面」を見つめ直すことから始まったのだ。」
飯沢耕太郎
(収録テキストより抜粋)
著者:佐藤信太郎
執筆:飯沢耕太郎
造本設計:町口覚
判型:370×263(B4変形)
頁数:66頁
製本:ハードカバー
発行年:2019.06
出版社:ふげん社
言語:日本語、英語
500部限定 エディション・サイン入り
出版:ふげん社