高田邦彦(たかだくにひこ)
結晶-雪- CRYSTALS SNOW 1993-1995
雪洞 SNOW CAVE 1995
1996年3月21日-4月26日フォト•ギャラリー•インターナショナルで開かれた同タイトル写真展のカタログ。
2冊1セット、各7ページ。
北海道網走市生まれの作者が撮った、雪の風景と雪洞の写真です。
雪を知る作家の視点から見た、幻想的かつ力強い雪の世界が広がります。
結晶-雪-
CRYSTALS-SNOW-
吹雪の止んだ翌日は静かだ。
車の音も人の声もいつもより聞こえない。
親切が音を吸い取り
ゆるやかにすべてが動き出す。
トラックは郊外の雪捨場へ向かう。
捨てられる為だけの雪を積み。
間もなく巨大な雪の丘が出現する。
丘の上では、雪と雲が混じり合う。
流氷の海辺。
波にさらされた雪は
ゆっくりと傾き海中へ落ちる。
崩れ続ける雪。
近くで古い魚網が燃えている。
日は雪をも燃やす。
山間にある雪の洞窟に侵入する。
天井からは雪解け水がしみ落ちる。
雪解け水は生命力に満ちる。
身体中を濡らしながら
白い光が広がる方向へ進む。
雪解けの頃。
雪中の泥が表面に浮き上がる。
雪だまりは日々小さくなり
最後は流れ出る。
残された泥。
二度知る雪の深さ。
そしてまた雪が降り出す。
網走にて
高田 邦彦
(P.G.I.レターより抜粋)
装丁:ペーパーバック