『王国 Domains』
2020年1月に逝去した写真家・奈良原一高の1950年代における代表作「王国」は、戦後日本写真史における重要作に位置付けられます。本作は、北海道・当別のトラピスト男子修道院を舞台とした「沈黙の園」と和歌山の婦人刑務所を撮影した「壁の中」から構成されます。奈良原は、長崎・軍艦島を撮影したデビュー作「人間の土地」でも閉じられた空間の中で生きる人々の姿や文明の野蛮を捉えていました。本作では、堅強な壁や明るい光が射す窓、のぞき見の視点といったモチーフが繰り返し用いられることによって外部との隔絶がより強く感じられます。奈良原はその隔絶された環境に暮らす人々の食事や労働・わずかな娯楽といった日課に着目し、彼らの日常の特殊性を浮き上がらせています。
本作は1971年に発行され、絶版状態が続いていた『王国』を未発表の作品を多数収録し復刊した新装版。奈良原一高研究者としても活躍する島根県立美術館主席学芸員・蔦谷典子氏による解説も収録しています。
▼収録予定作品
◇沈黙の園:87点
◇壁の中:48点
著者:奈良原一高
出版社:復刊ドットコム
寄稿:蔦谷典子
デザイン:佐野裕哉
仕様:A4変型/ハードカバー/208P
言語:日本語/英語