夢の讃美歌集
「夢の讃美歌集」と題する作品は、幼い頃の思い出や夢の中に現れた、たてものや人物、おとぎ話を物語風に写したものである。
私は北部で育った。しかし両親は南部の出身である。そのためか、自分の原点を求めるとき、いつも南部の土地にたどり着いてしまう。
ヴァージニアのその土地は僅かなものであったが、子供の頃、親戚から聞いた話の中で膨らんで、私のイメージを沸き上がらせ る泉となっている。家族と共に過ごした家屋の事や、庭で遊んだ記憶は心象の奥深く幾重にも重なって絡まってくる。そこは、幼い心に残された思い出の場所で ある。しかし今私は、これを夢と記憶とが現実の形を帯びて現れてくる新しい世界として捉えようとしている。
この作品集は子供の頃の夢と体験で綴られている。その中では記憶の断片は継ぎ合わされ、夢は積み重ねられ、時に中空に浮いて、新しい世界を創りだす。
しかし、それが南部のシーンを背景に、新しい形に変貌することがあっても、私は「本来の姿」や「意義」は留めておきたいと思う。これらのイメージは、過去との関わりの中で、現時点での意義を模索するものだからである。
対象をどのように扱い、構成し、価値づけるかによって、作家の現在の心境は自ずと現れてくるものである。
Elijah Gowin
このカタログは2001年開催のロバート・マン・ギャラリーでの展覧会に合わせて出版された。
32ページ、15図版
1500部
2001年
作家サイン入り
イライジャ ゴーウィン
オハイオ州デイトンに生まれる。父は写真家のエメット・ゴーウィン。1996年、ニュー・メキシコ大学より美術学修士号を受ける。幼い頃の体験や思い出、夢の中の出来事をモノクロームで物語風に写した「Hymnal of Dreams 夢の讃美歌集」を1994年から制作。2004年に日本で初めて作品が紹介された。最新作にアーカイバル・ピグメント・プリントによるカラーの作品「Of Falling and Floating」がある。2008年、グッゲンハイム奨学金を受ける。同年、Tin Roof Pressを設立。現在ミズーリ大学カンザスシティ校学部長及び教授として美術および美術史を教えている。
出版:Tin Roof Press and Robert Mann Gallery