圓井義典:写真という寓意

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商品説明

2025年開催の作品展「写真という寓意」に合わせ刊行したZINE

写真という寓意
スマホにたまった写真を見返していたある日、それらの写真がとてもよくできた喩えのように思えた。
写真一枚一枚がある事物や出来事、世界の視覚的断片だとすれば、つないだ娘の手のぬくもりやSNSで目にしたコメント、そんな私自身の日々の記憶ひとつひとつも、私自身がとらえた世界の断片のようなものだといえるだろう。
ところで、自分で撮ったことさえ忘れていた写真や他人の写真を見て、偶然そこに新しい何かを見出したり、写された人の知らない一面を見出したりすることは、きっと誰にでもある経験にちがいない。もしそうだとすると、そして私たちの記憶も写真と同じく世界の断片のようなものなのであれば、自らの人生やこの現実に対するこれまでとはまったく違ったイメージを、私たち自身が忘れていた記憶の中に、そして他人の記憶の中にある時ふと見出す可能性がいつでも潜んでいるということではないだろうか。
ここにある写真たちは、ここ数年のあいだに偶然何かの拍子に撮影されたもの、私の記憶そのもののような存在だ。なぜそれを撮りたいと思ったのか、誰が撮ったのかということすら(中には娘たちが撮ったとおぼしきものもある)忘れてしまったものさえ含まれている。
それらの写真をあらためて見返す行為は、私にとってはいつもは通らない道を歩いてみるような、あるいは久しぶりのパサージュを散策するような、そんな新しい発見のためのちょっとした冒険でもある。
それによって実際に何かが見つかるかどうかはあまり重要ではない。むしろ、未知の可能性が、汲みつ
くせない世界の断片が、今も目の前のどこかに隠れているにちがいないということをあらためて確かめる
ことこそが、私にとっては何よりも大切なのだ。
2024年11月
圓井義典

2025年2月4日発行
著者・発行者:圓井義典
デザイン:中 新(ララスー・デザイン)
印刷:イニュニック

表紙3種


出版:圓井義典

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